メダカ飼育を行っていく中で、PSBという言葉を耳にすることがあるかと思います。
メダカ飼育に良いというけれど、どのような効果が期待できるのでしょうか。
今回は、そんなPSBについてご紹介していきます。
目次
PSBとは
PSBとは、酸素を発生させない光合成を行って生育する細菌、光合成細菌を主としたバクテリア剤です。栄養分などが添加されているものも販売されています。
光合成細菌は、光合成に硫黄などの無機物を利用する「緑色硫黄細菌」「紅色硫黄細菌」と、有機物を利用する「紅色非硫黄細菌」に大別されます。PSBとして販売されているものは、主に紅色非硫黄細菌（ex.ロドシュードモナス・カプシュラータ）が利用されています。
つまり、PSB≒光合成細菌≒紅色非硫黄細菌であると言えるでしょう。
名称は、Photosynthetic Bacteria（光合成細菌）、またはPurple Non Sulfur Bacteria（紅色非硫黄細菌）に由来すると考えられます。
紅色非硫黄細菌
緑色硫黄細菌・紅色硫黄細菌が、酸素のない環境（嫌気的環境）でしか生育できないのに対し、紅色非硫黄細菌は酸素の有無（好気・嫌気）に関わらず生育が可能です。光合成だけでなく、暗所では酸素と有機物を利用して繁殖が可能です。
メダカ飼育におけるPSBのはたらき
水質浄化
上記の通り、紅色非硫黄細菌は有機物を利用して生育・繁殖を行うため、汚水処理施設や、養鯉施設などで利用されてきました。
メダカ飼育においてもフンや残餌などの有機物は、水質を悪化させる要因になるため、PSBには有機物分解による水質浄化が期待されます。
『汚水浄化過程中における光合成細菌の役割』についての研究では、汚水中の微生物は、有機栄養微生物、光合成細菌、藻類の順に生育し、有機物を分解していくことが確認されています。
餌（栄養源）
光合成細菌の菌体成分には、豊富なアミノ酸やビタミンが含まれています。このことから、メダカ飼育においても栄養源としての利用が可能です。
動物プランクトンの餌
メダカ飼育では人工飼料の他、ミジンコなどの動物プランクトンが生餌として利用されます。
PSBは動物プランクトンの餌にもなり、
光合成細菌体は動物性プランクトンの「えさ」として非常に有効で、光合成細菌体をそれ らが捕食利用した場合には猛烈に増殖することが確認された
とあるように、直接的に動物プランクトンの繁殖を助けることが示されています。
加えて、PSBを与えたワムシ（動物プランクトン）を、餌として魚類の仔魚に与えた実験（『光合成細菌を添加培養したシオミズツボワムシの養殖魚仔稚魚に対する効果』）では、成長促進効果・生残率向上効果が確認されています。
メダカの稚魚（針子）の餌
動物プランクトンを介した間接的な摂取だけでなく、メダカの稚魚は光合成細菌直接的な摂食も行います。
さらに、
魚類の孵化直後の稚魚に光合成細菌体のみ投飼してその成長ぶりを観察した結果、よく哺食して非常によい成長ぶりを示すことが認められた
魚類（鯉、金魚、赤貝など）の孵化直後の仔魚も光合成細菌体を直接捕食利用してる事実が証明され、今までの飼育方法に比べて、光合成細菌体を添加すれば孵化直後の2週間〜1 箇月くらいの間には、増体重、生存率とも倍以上（魚種によってはほとんど死亡しなくな る） になることが確実になった
との報告もなされており、稚魚の成長率・生存率に対して好影響を与えることが示されています。
色揚げ
PSBは独特な赤色をしていますが、これは、
光合成細菌体中に大量含まれる、カロチノイド系色素により真紅色にみえる
ためのものです。
錦鯉では、経験則に基づくPSBによる色揚げ効果が指摘されており、餌に混ぜて与える愛鯉家もいるようです。
カロチノイド系色素は、メダカの持つ黄色素胞に影響するので、餌として与えることで、色揚げ効果が期待されます。
PSBの使い方
水質浄化を目的として使用する場合は、製品の用法用量に則って使用すれば問題ありません。
稚魚の餌としては、いくらか多めに入れてしまっても大丈夫でしょうが、製品の用量から、様子を見ながら少しずつ与える量を増やしていくのが無難でしょう。
まとめ
PSBは、メダカ飼育において様々なメリットをもたらします。
特に、稚魚に対しては餌として、成長率・生残率にたいする効果も期待できます。
メダカ飼育や稚魚の育成で悩みのある場合、一度、試してみても良いかもしれません。
