メダカの産卵・孵化は、メダカ飼育における楽しみのひとつです。
しかし、せっかく産んでくれた卵がなかなか孵らないと、なにが原因であるか気になってくるはずです。
今回は、メダカの卵が孵化しない場合、どのような原因が考えられるのかご紹介していきます。
無精卵
当然ですが、産まれた卵が無精卵である場合、孵化することはありません。
メダカの受精には、オスの放精とメス排卵が同調して行われる必要があり、若いメダカや、ペアとなって間もないメダカでは、交尾自体がうまく行えず、無精卵となってしまうことがあります。
また、無精卵は放置しておくと水カビに冒されやすく、近くの受精卵も巻き込んでしまうおそれがありますので、発見次第除去してしまいましょう。
無精卵は見た目には白濁しており、弾力がなく指やピンセットなどで簡単につぶれてしまうので、受精卵との見分けるのは難しくはありません。
受精卵(有精卵)
水カビ
水カビの原因菌は、飼育水中や孵化水中に常在しているといわれています。
卵表面の付着糸・付着毛はカビの原因となるおそれがあります。
採卵時に付着糸・付着毛を処理しておく、カビた卵は見つけ次第小まめに排除することで、被害を抑えることにつながります。
また、健康な受精卵の場合、カビの影響はほとんど受けませんが、カビに侵された無精卵が近くにあると、伝播繁殖によってカビに覆われてしまいます。カビに覆われると、酸素やアンモニアなどの影響もあり、受精卵でも死卵となってしまうおそれがあります。
水温
メダカの卵は、積算温度250℃日(水温×日数)を目安に孵化するとされています。
しかし、高温であれば必ずしも、早く孵るわけではなく、
メダカの発生が可能な水温域は、最低16℃前後から34℃までの間であるらしい
大学教育出版:『メダカ学全書』より引用
とある通り、これよりも高温下では孵化率の低下、奇形が発生しやすくなるとされています。
また一方で、孵化に適した水温域であっても、
卵の発生は、35℃以下であれば、水温が高いほど速いが、低い水温下で産み落とされた卵の方が孵化に要する日数が短い
大学教育出版:『メダカ学全書』より引用
とされており、高水温環境で産卵された卵が、比較的低水温の孵化環境に移動されることで、孵化に要する日数が長くなってしまうことも確認されています。
水質
処理水を使用した孵化実験(『 魚類の繁殖・稚魚の生育試験による下水処理水の安全性評価に関する研究』)において、水道水(カルキあり)、またはカルキ抜きを行った水道水での孵化率の高さが確認されており、 さらに、
水温をいくら一定に調整しても、排泄物が多く、溶存酸素が少ないなど水質が悪いと発生速度を著しく乱してしまう
大学教育出版:『メダカ学全書』より引用
とあるように、孵化水の水質維持が、孵化率に影響を与えることが確認されています。
以上のことから、卵の段階であっても定期的な水換えを実施し、水質を維持することが望ましく、加えて孵化環境においては、水道水を用いることで、カルキ(塩素)の消毒殺菌効果による水カビ予防も期待されています。
光
メダカの孵化は、稚魚が体を覆う卵膜をから抜け出て完了されます。
卵膜からの脱出には、卵膜を溶解する孵化酵素の分泌が必要であり、
胚を12時間の明期と12時間の暗期の光周期(12/12D)下で発生させた場合、明期でおこる孵化の頻度が暗期で起こるその頻度より高いことを示した
大学教育出版:『メダカ学全書』より引用
光のような刺激が中枢神経系を通して、孵化酵素を分泌させる可能性がある
大学教育出版:『メダカ学全書』より引用
とされています。
実際に、『サケ・メダカの孵化・成長と光質の関係』における実験では、昼夜(明暗)環境における孵化率の高さ、加えて孵化後の成長率・生存率においても優れた結果が報告されています。
このように、メダカの孵化には光と、その周期性が影響を与えることが示唆されており、特に室内孵化の場合には、光の管理も大切な要素となります。
まとめ
メダカの卵が孵るにためには条件があり、無精卵でなく、きちんと受精できた有精卵であっても、条件が整わなくては孵化は行われません。
しかし、それぞれの条件を揃えることは、難しいことではありませんので、卵が孵化しない際には、ひとつずつ確認し環境を整えてあげましょう。