メダカの卵の孵化率を決める要因として、2つの要因があります。それは、卵を孵化させる環境という要因と、遺伝的という要因です。
今回は、メダカの卵の孵化率に関するこの2つの要因と、要因を解決することで見えてくる孵化率アップの方法を紹介します。
目次
メダカを孵化させる環境要因
メダカが産卵してくれたら、採卵し、無精卵の除去や別容器での管理をしたほうが良いでしょう。水温も適した水温があり、光も重要ですので、それらの方法を詳しく紹介します。
採卵
メダカ親魚が卵をもっているのを見つけたら、直接採卵するか、産卵床や水草に産みつけるのを待って卵を回収します。メダカの成魚は、自分の産んだ卵であっても食べてしまうことがありますので、親魚から守るためには、卵を隔離して管理します。
無精卵・カビの除去
採卵した卵は塊状になっていることも多いですが、水道水を浸したガーゼなどの上を転がして、表面に付着している付着糸や汚れを落としながら、一粒ずつに分けて行きます。
この際、簡単につぶれてしまうような卵は、無精卵であるかカビにおかされている卵ですので、除去します。有精卵であれば弾力がありますので、簡単につぶれてしまうことはありません。
一粒ずつに分けることで、以降、カビの伝播などの予防につながります。
孵化用水と水換え
一粒ずつに分けた卵は、タッパーなどに入れて水道水(または0.00005~0.0002%メチレンブルー水溶液)で管理します。メダカ飼育においては、カルキ抜きをした水が推奨されますが、卵の状態では、カビ発生予防を目的にカルキ抜きを行わないで使用します。
卵の状態であっても水は汚れていきますので、1日1回程度の水換えの実施をおすすめします。
水温
水温は18~28℃程度の温度での管理が適しています。
『メダカ及金魚卵の孵化日數と水温との關係』における実験では、18~25℃で管理した卵は8割以上の孵化率を見せるのに対し、30℃以上の高水温・14℃以下の低水温で管理した卵の孵化率は著しく低く、また孵化後の生存率も低いことが確認されています。
光
メダカの孵化は、卵内の稚魚が卵膜から出て完了します。
卵膜を溶かすための酵素は、光刺激の影響を受けるため、孵化環境においても光の照射は必要な要素です。
室内や冬季における孵化では、照明を使って明期と暗期のサイクルをつくってあげましょう。
ここまで整えることができると、孵化率はかなりアップしてくると思います。しかし、これでも孵化率がアップしないことがあるのです。それは、メダカの種類による遺伝的なものです。それでは、詳しく解説していきます。
メダカの種類によっての孵化率の違い
筆者はたくさんの種類のメダカを育てていますが、そのメダカの種類によって有精卵の孵化率が違うことが分かってきました。筆者が育てているメダカの中でも、特に孵化率が悪いメダカを例に見ていきましょう。
孵化率は40%!?
筆者が育てているメダカの卵の孵化率は、90%近くはあると思います。しかし、その中でも特に孵化率が悪いのが、ヒレと体色に特徴のあるみゆきなのです。おそらく孵化率は40%前後と思われます。
それでは、なぜこんなに孵化率に差が出てくるのでしょうか。原因と考えられることを紹介します。
孵化率が違う原因
条件の違い
筆者が育てているメダカの有精卵に条件の違いは一切ありません。
採卵したあとは別の容器に隔離し、無精卵と付着糸も毎回手で取り除いています。水は水道水を使い、水温はヒーターで26〜28℃で管理し、水換えは毎日実施しています。
今回のみゆきの孵化率が低い原因はこれには当てはまらないようです。
遺伝的な問題
有精卵であっても内臓の異常を有する遺伝的な問題がある場合、死んでしまう場合があります。
内臓の異常はしばしば致死的であるため、発見・継代しにくい。
大学教育出版:『メダカ学全書』より引用
つまり、最初は有精卵であっても、遺伝的に内蔵異常を起こしており、卵の中で成長できずに死んでしまうのです。
その他の変異問題
数多くの劣勢因子の突然変異種mutantsが発見されているが、遺伝子の数からして当然これらよりはるかに多くの変異型が存在するものと推定される。
大学教育出版:『メダカ学全書』より引用
筆者が育てているみゆきはこれに当てはまるのかもしれません。
通常のみゆきと比べ、色やヒレに特徴があることを考えると、様々な劣勢の遺伝子を継代している可能性があります。
もしかすると、有精卵の中で内蔵に問題が出たり、その他のいろいろな問題を抱えていて成長することができず、有精卵が死んでしまっているのかもしれません。
孵化率アップ
有精卵が死んでしまうことは悲しいことですが、問題のある劣勢の因子が途切れ、継代しなくなったということを考えると、今後産まれてくる卵の孵化率のアップに繋がったと言っていいでしょう。
まとめ
メダカの卵の孵化率をアップさせる方法は、孵化させる環境を整えるか、遺伝的に死ぬ因子を継代させないかです。
環境はすぐに整えることはできますが、遺伝的な方は、繁殖を繰り返していくことで改善できるもので時間がかかります。
時間をかけてメダカと向き合う面白さもありますので、ゆっくりと孵化率をアップさせることにチャレンジしてみてください。