メダカは絶滅危惧種?
メダカは、1999年に、環境庁(現環境省)の定めるレッドリストに、絶滅危惧Ⅱ類(=絶滅の危険が増大している種)として登録されました。
かつては日本各地の様々な小川や田園などで見られていたメダカたちは、河川改修などを含む農地開発や、生活排水の流入による環境の悪化、アメリカザリガニやカダヤシなどの外来種の進出などにより、野生での数を減らし、絶滅の危険に瀕するまでに至ってしまったのです。
なぜ放流してはダメなのか
飼育環境下におけるメダカの繁殖は、難しいことではありません。
理論上、1匹のメスは4000~5000個の卵を産むことができるため、環境さえ整えてしまえば、数はどんどんと殖えていきます。
手元で順調にくれるメダカ、そして絶滅の危険があるという情報からは、放流はメダカを守り自然界に還元する保全運動であり、推進されるべき行為にも思われます。
しかし、飼育メダカの野生環境への放流は、かえって野生メダカを危機に追いやるとされています。
その理由は野生メダカの遺伝子にあります。
遺伝子汚染(遺伝子撹乱)
飼育されているメダカのほとんどは、人間の手により多品種の交配を繰り返し、改良・作出されてきたものです。
一方で、野生のメダカは各地方ごとに特有の遺伝子をもっていることが確認されています。
北日本集団(キタノメダカ)・南日本集団(ミナミメダカ)に大別され、南日本集団はさらに、東日本型・山陰型・東瀬戸内型・西瀬戸内型・北部九州型・有明型・薩摩型・大隅型・琉球型に分類されます。
ヒメダカをはじめとした改良品種を野生環境に放流することによって、野生メダカと交雑し、個体群ごとに何万年もかけた進化の中で形成された遺伝子的多様性を脅かすことになるのです。
実際に、善意の放流が原因と思われる、遺伝子汚染(遺伝子撹乱)の例も報告されています。
まとめ
飼育環境下で増えていくメダカたちのかわいい姿をみていると、野生のメダカを守ってあげたい、自分になにかできないだろうか、そんな感情を抱くのも自然なことです。
しかし、野生のメダカには目には見えない多様性と独立性があり、善意による放流であっても、それは野生のメダカの自然な累代を阻害することにつながりかねません。
自然界の野生のメダカと、飼育・販売されているメダカは、分けて考える必要があるのです。