メダカ飼育において、一度は目にする楊貴妃メダカ。
楊貴妃メダカをきっかけに、メダカ飼育をはじめる方も多いかと思います。
今回は、そんな楊貴妃メダカについてご紹介していきます。
目次
楊貴妃メダカとは
鮮やかな朱赤の体色が特徴のメダカです。
その体色の美しさから、世界三大美人のひとりである「楊貴妃」を名前の由来としています。
”赤い”メダカと形容されることもありますが、メダカは赤色の色素胞を持っていませんので、黄色素胞からなる朱赤の体色です。
多くの品種の作出に寄与した、幹之(みゆき)メダカと双璧をなす、昨今の改良メダカブームの火付け役です。
現在では、ホームセンターなどでも扱われており、入手も容易です。
楊貴妃メダカの飼育
普通体型の楊貴妃メダカの場合、屋外・室内いずれ環境でも飼育が可能ですので、好みや環境にあわせて飼育してあげましょう。屋外飼育の場合、鮮やかな体色が、天敵である鳥類などから発見されやすい傾向にあるため、容器を網などで保護するか、隠れ家になるものを入れてあげましょう。
楊貴妃メダカとヒメダカ
楊貴妃メダカは、黄色~緋色の体色を表すヒメダカ(緋メダカ)系統から発生した突然変異体が源流とされており、
体表の色素胞は、楊貴妃メダカ、ヒメダカともに黄色素胞が主体で、黒色素胞はほとんど存在しなかった。
とあるように、この2品種における色素胞の類似点も示されています。
この2品種の体色の差は、黄色素胞に含まれる、天然色素カロテノイド(カロチノイド)濃度にあり、
黄色素胞内の色素顆粒は楊貴妃メダカが橙赤色で、ヒメダカは淡黄色であった。アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテインの濃度は楊貴妃メダカがヒメダカよりも高く、とりわけアスタキサンチンは楊貴妃メダカがヒメダカの10倍以上高かった。
との実験結果が得られています。
アスタキサンチンは、黄色の色素であるキサントフィル類に属しますが、赤色をなす色素物質です。つまり、この物質の濃度の違いが、楊貴妃メダカとヒメダカの体色の差に影響しているのです。
楊貴妃メダカの色揚げ
餌
楊貴妃メダカの朱赤色は、カロテノイド、主にアスタキサンチンの影響によるものです。魚類を含む動物は、アスタキサンチンを含むキサントフィル類のカロテノイド(カロチノイド)を、食べ物から摂取する必要があり、
楊貴妃メダカの朱赤色はカロテノイドと関連があること,カロテノイドの摂取により赤みが強くなることを示している。
との実験結果も得られています。
現在、各社より色揚げを目的として、カロテノイドを配合した人工飼料が販売されていますが、このことからも、餌による色揚げは可能であると考えられます。
一方で、販売先が色揚げ用の飼料を使用していた場合、購入後、餌が変わることで、色抜けが発生するおそれがあります。
グリーンウォーター
メダカはグリーンウォーターで飼育することによって、飼育水中に発生した植物プランクトンを摂食しながら成長します。植物プランクトンも、カロテノイドを含むものが存在するため、色揚げに有効であるとされています。
しかし、含まれるカロテノイドの種類・濃度は、植物プランクトンの種類や環境によりますので、必ずしも目に見える効果が得られるとは限りません。
保護色(背地反応)
メダカは色素胞内の色素顆粒を、背地(飼育容器・底床)にあわせて凝集・拡散することで、体色を変化させます。
上記の通り、楊貴妃メダカの朱色を表しているのは黄色素胞です。黄色素胞は、暗背地で拡散するため、楊貴妃メダカの鮮やかな朱色を楽しみたい場合は、濃い色の容器、または暗色の底床で飼育すると良いでしょう。
この保護色による体色変化は一時的なものですが、
長期間同じ背地環境に置かれると、色素胞の数や形状が変化してくる。
総説『メダカの色素胞と体色変化』より引用
とされており、長期間にわたり暗配置で飼育することによって、色揚げにつながる可能性も否定できません。
遺伝による作出
体色の濃い個体同士をペアに繁殖を繰り返すことで、濃い体色を固定化していく方法です。
楊貴妃メダカに限ったことではなく、また、一代で可能な方法ではないため、厳密には色揚げではないかもしれませんが、長期にわたってメダカ飼育を行う場合には、有効な手段です。
まとめ
楊貴妃メダカは、改良メダカブームに寄与したメダカです。
昨今では、様々な体色や模様のメダカたちが作出されていますが、楊貴妃メダカのもつシンプルな美しさは、いまでもその魅力を失ってはいません。
入手も容易で見た目も美しい楊貴妃メダカは、初めてメダカを飼う方にもお勧めできるメダカです。
楊貴妃メダカの画像
上から見た楊貴妃メダカ
横から見た楊貴妃メダカ
楊貴妃メダカの稚魚
楊貴妃メダカの針子(産まれて間もない稚魚)
楊貴妃メダカの卵
楊貴妃ダルマ(初恋)
椎体の欠失によって体の短い、ダルマ体型の楊貴妃メダカ。