メダカ飼育において、飼育水の水質は非常に大切な要素です。
しかし、ひとくちに水質と言っても、その内容は多岐にわたります。
今回は、その水質のうち「pH」に着目し、ご紹介していきます。
目次
pHとは
pH(ペーハー)とは水素イオン指数の単位で、水溶液の酸性・中性・酸性の程度を表します。
0~14の数値で表され、7を中性とし、数値が小さくなれば酸性が強くなり、数値が大きくなればアルカリ性が強くなります。
日本国内のにおける水道水のpH値は、中性に近い5.8~8.6に定められています。
pHショック
異なるpH環境へ移動された際のショック症状を、pHショックといいます。
pH値の急激な変化はメダカの負担となり、異常行動や体調不良、突然死の原因となってしまうおそれがあります。
そのため、新規購入時や飼育容器の引っ越しなど、メダカの飼育環境が大きく変化する可能性のある場合には、慎重な水合わせを行う必要があります。
メダカ飼育に適したpH
弱酸性~弱アルカリ性の、比較的広い水質での飼育が可能です。
特に、中性~弱アルカリ性の水が適しているとされていますが、pHの急激な変化がなければ、通常飼育で問題になることはほとんどありません。
pHを変化させる要因
飼育環境や管理の方法など、様々な要因で飼育水のpH値は変化します。
底床
底床の種類によって、飼育水を酸性・アルカリ性に傾けます。
一般的に、ソイルや赤玉土は酸性に、砂・砂利(大磯砂など)やサンゴなどはアルカリ性に傾ける効果があります。
硝酸
メダカのフンや残餌などから発生するアンモニアは、硝化バクテリアのはたらきによって分解され、硝酸に変化します。
飼育水中に堆積した硝酸は、pH値を下げて酸性に傾けます。
飼育環境下では硝酸の排除は主に水換えによって行われますので、pH値の急激な変化を避けるためにも、定期的な換水が必要です。
雨
環境省:『平成30年度版 環境・循環型社会・生物多様性白書』
第2部 第4章 より引用
屋外飼育の場合、容器に降り込む雨もpH値を変化させる原因となります。
環境省の発表においても、日本は全国的に酸性の雨(平均pH:4.72)が降り、特に冬~春季にかけは濃度が濃いと報告されています。
飼育容器の容量にもよりますが、大量の雨(酸性雨)が降り込んだ場合、水質が酸性に傾くおそれがあります。
グリーンウォーター
グリーンウォーターは、植物プランクトンが大量に発生した状態の水です。
植物プランクトンは、水中の二酸化炭素を利用して光合成を行います。
飼育水に溶けている二酸化炭素はpHを酸性寄りにしていますので、光合成によって二酸化炭素が奪われることで、pH値は上がり、アルカリ性に傾きます。
pHを調整するには
底床
先述したとおり、底床の種類はpHに影響を与えます。
底床の選択には、濾過バクテリアの定着(水質の安定)や水草の有無など、目的や飼育環境も関係しますので、総合的に判断する必要があります。
サンゴ・牡蠣殻
いずれも炭酸カルシウムが主成分です。
炭酸カルシウムは酸性寄りの水に溶け出し、pH値を上げ中性~弱アルカリ性へと傾けます。
流木
流木から発生するアクの主成分は腐植酸といわれ、水質を酸性に傾けます。
腐植酸が溶け出し茶色~黒色に変色した水は、ブラックウォーターと呼ばれ、弱酸性を好む魚を飼育する際に利用されることもあります。
水質調整剤
飼育水に添加することによって、pHを調整する薬剤も販売されています。
目指すpH値に応じて、pHを下げる、pHを上げるものが選択できます。
持続性が低いとされており、定期的な添加が必要となります。
pHを測るには
各メーカーより、pHの測定器や試薬・試験紙などが販売されています。
pHだけでなく、硬度や亜硝酸濃度など、総合的な水質を測定できる商品も販売されています。
まとめ
メダカは弱酸性~弱アルカリ性の、広いpH域で活動できる強い魚です。
それでも、極端に低い・高いpH環境や、急激な変化は負担となってしまいます。
目には見えない、透明な飼育水の中のことではありますが、メダカ飼育にとっては大切な要素です。