メダカの繁殖を行っていく過程で、いちどは卵を産んでくれたメダカが、急に卵を産んでくれなくなることがあります。
実際、冬の期間、室内加温で産卵させることを目的に飼育していたメダカが、卵を産まなくなってしまいました。
今回は、卵を産まなくなってしまったメダカに、また産卵してもらうために行ったことをご紹介します。
飼育環境
産卵しなくなったのは、幹之メダカです。
いちどは10個程度の卵を産卵床に産み付けてくれましたが、その後は抱卵している姿すら見かけなくなりました。
室内加温飼育で産卵させた楊貴妃メダカの飼育環境にならい、ほとんど同様の環境・管理で飼育しています。
相違点としては、
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メダカの飼育数(3匹)
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水温が26~28℃(ヒーターによる自動設定)
- 水量に対し濾過能力の低い投げ込み式フィルター(ロカボーイコンパクト)を使用
の3点程度です。
原因を考える
オスメスの割合
産卵を目的とした飼育の場合、オスメスの割合は1:3であるのに対し、当該容器における割合はオス2匹、メス1匹の2:1。全く産卵用に適した割合ではありません。
また、メダカの交尾はオスメスの協調が必要であり、相性が合わないと産卵まで至りません。
光・水温
光は、一般用シーリングライトの照射・日に2~3時間程度の太陽光の射し込みですが、隣に設置している楊貴妃の飼育容器と同じ条件であることから、特に原因とは考えられません。
また、水温に関しては26~28℃と比較的高くはありますが、メダカには過ごしやすい温度であり、負担になっているとは考えにくいです。
栄養(餌やり)
餌やりは1日に2回、3~5分程度で食べ終える量を目安に与えていました。
しかし、餌を食べる様子を観察していると、オスの1匹が他のメダカを追い払いながら餌を食べていました。
メダカは自然環境下では縄張りをつくることはありませんが、生活空間の限られる飼育環境下では、縄張りをつくることがあります。
給餌がおこなわれる水面付近は、縄張りとして魅力的なようです。
水質
飼育数も3匹と少なく、5~7日置きに定期的な水換えも実施していることから、急激な水質悪化が起こることは考えづらい状態です。
水質維持に重要なバクテリアは、高温環境でははたらきが鈍くなりますが、30℃以下では十分に活動が可能です。
「ロカボーイコンパクト」の対象水量8リットルに対して、容器の水量は13~14リットルと対象水量を超えてはいますが、もともとヒーター使用における水の撹拌を目的に導入しているものであり、水質の極端な変化を左右するものではないと考えます。
対策
産卵において、メスは多くの体力を消費します。
現環境では、産卵できるほど体力にゆとりがないと仮定し、栄養の確保・体力の温存を目的とした対策を行うことにしました。
オスの隔離
他の2匹を追い払いながら餌を食べていたオスを隔離しました。
もう一方のオス、メスに対し十分な給餌を行うこと、飼育環境内のパワーバランスをリセットすることが目的です。
水温・水質の悪化を避けるため、飼育容器に浮かべたプラスチック製のザルに移して管理します。今回は3日間隔離を行いました。
水流の調整
メダカは田んぼや小川など、流れの緩やかな場所・止水地を好んで生息していた魚です。
そのため、強すぎる水流はメダカの体力を消費させます。
当該飼育容器では、水の撹拌を目的としてエアレーションはロカボーイコンパクトを使用しています。エアー量はエアポンプの出力に依存するため、水の流れができています。水流をやさしくする「ロカボーイ パワーアップパイプ」も使用していないため、水流は楊貴妃の飼育環境よりも強い印象でした。
水流に逆らって泳ぎ続けているような様子はありませんでしたが、体力の温存と電源周りの整理をかねて、三又分岐でエアー量を調整し水流を弱めました。
結果
オスの隔離明けから2日後、メスが卵をつけて泳いでいました。
交尾の様子は確認できませんでしたので、どちらのオスが親であるかは不明です。
今回の対策においては、給餌(オスの隔離)・水流の調整によって、メスの体力がついたことが原因と考えられます。
まとめ
今回は、産卵におけるメスの体力に着目し、そこを改善することで再び産卵させることに成功しました。
当該環境では、メダカのオスメスの割合は、全く産卵に適したものではありませんでしたが、無事に再び産卵するようになってくれました。
飼育数・オスメスの割合・オスメスの相性が、産卵に影響することは確かなので、親魚候補が他にもいる場合は、飼育数を増やす・ペアを入れ替えるなどの対策も効果的であると考えられます。。
今回の例は、限られた条件におけるものではありますが、参考になれば幸いです。